習慣が未来をデザインする(例えば、くしゃみ)

16年間、続いている習慣がある。「追加のくしゃみ」だ。

「奇数回のくしゃみをしたら、わざともう1度くしゃみをして、偶数回に戻す」。

1回のくしゃみだったら、もう1度追加して、合計2回分したということにする。

「奇数のくしゃみは悪い噂。偶数ならよい噂」

小さな頃にそう聞いてから、なんとなく始めた。

 

最近の「くしゃみ」を起因とする行動は以下のとおり。

 

・よい噂をされていることになるから、機嫌がよくなる

・機嫌がよくなると、思い切った行動が取りやすくなる

・思い切ると、執筆用のシェアオフィスを1ヶ月契約する(完了)

 

些細な事に思えても、習慣は未来の可能性に影響しているのだ。

 

世の中には、習慣によって固有の人生になった人もいる。

・「水曜日の19時に、馴染みのカフェで待っています」という恋文を送り、その後35年間、決められた時間に、カフェで愛する人を待ち続ける人生*1

・62年もの間、「読者がいない自分のためだけの小説」の執筆を続け、生涯で1万5145ページも書き上げる人生*2

 

習慣は他にも様々だ。

「ベルリンのスタートアップ企業で働くために、毎週土曜日の18時からドイツ語のレッスンを入れている」という目的ありきのものだったり、「夜ご飯を食べたら30分以内に歯磨きをしていたけど、そのときに片足立ちをする」と既存の習慣をアレンジをしたものだったり。

 

バタフライエフェクトじゃないけど、片足を上げる人生と上げない人生とは違ったものになる可能性がある。行動に移せるかどうかが違いを生む。大切なのは自らの行動が未来に影響を与えているという感覚だ。

 

習慣は細かく見れば、1回1回の行動なのだ。行動は可能性を左右する。

それならば習慣は、未来をデザインしているとも言えるのではないだろうか。

 

 

*1:ガルシア・マルケス『物語の作り方』もしくは『わが悲しき娼婦たちの思い出』の訳者あとがきより。"子供も孫もいる老女のもとに、ある日一通の手紙が届いた。差出人は彼女がかつて心から愛していた男性であり、水曜日の午後五時にどこそこの喫茶店で待っていると書いてあった。女性がまさかと思いながらも店に行ってみると、なんとその男性が彼女を待っていた。つまり彼は35年間、毎日欠かさず彼女を待ち続けていたのだ"というお話。創作されたエピソードの可能性が高い。真偽は不明。

*2:ヘンリー・ダーガー。世界一長い小説と言われる『非現実の王国で』の作者。62年間、読者を想定していない自分のためだけの小説を、人知れず書き続けた。日中は病院の掃除婦として仕事をし、夜に執筆をしていた。彼の部屋にはベッドがなかったと言われている。死後、遺品を整理しにきた大家が、大量の原稿用紙を発見し、ダーガーが小説を書いていたことが発覚した。